2012年02月22日

桜草の育て方.4-4

【 桜草の栽培イメージ.1 】
植物を栽培する際に、自生地の生息環境をイメージしておくことは、大切だと考えます。
桜草の場合、自生地の多くは消滅してしまい、私は自生している姿をみたことがありません。
それでも自分なりの自生地へのイメージを持って栽培しています。
滑稽な推察での話しなので恥ずかしいのですが、自分が持っている桜草のイメージを記してみます。


・桜草は水辺の植物ではない。
鳥居恒夫著『色分け花図鑑 桜草』の内容は、品種名と由来、読み方などは根拠がなく信憑性が問われますが、
鳥居恒夫氏は植物の専門家ですから、深谷鉢の斡旋文以外では、桜草を水辺の植物とは一言も書いていません。
書いていませんが、使われている単語から、我々は勝手に水辺の植物と勘違いしてしまうようです。

『色分け花図鑑 桜草』10ページ『サクラソウ(桜草)という草花』には
「関東から中部と山陰、九州では高原の湿性地に生え、云々。」
「草原や雑木林の湿性地に生える多年草で、云々。」
と書かれていますが、
湿性地とは、一般的に連想してしまう湿地のことではありません。

語弊があるやもしれませんが、
河川敷が湿性地。普段は普通に歩ける土地だが、雨が激しく降ったり川が大増水すると潅水するような場所。
湿地はぴちゃぴちゃ水が張った泥濘(ぬかるみ)。浅い沼地、その水辺。
湿地は常に湿っていたり潅水しているので歩くと汚れるし、水辺の歩行は困難。トンボや蚊など水生昆虫が生息し、水草が生えている。

また鳥居恒夫氏は著書を図鑑と銘打ち『湿性地』という文言を使いながら、
説明を噛み砕いきすぎたのか、誤解を招く文言を使いました。
12-13ページ『高原の山地から流れ下り 江戸で花開いた桜草』に
「増水による泥土の堆積が大増殖を促した」とありますが、泥が堆積したのではありません。

『泥土』は文字通り泥と土ですが、一般には「泥の土=泥」とイメージしてしまいますよね。
さらに葦は河川敷にも沼地にも、どちらにも生い茂りますから、
『葦、湿性地・増水・泥』というワードから連想して、
桜草を水辺の植物=湿地の植物と勘違いして捉えてしまっているようです。

でも、増水によって堆積したのは『泥土』ではなく『砂礫』と捉えるべきです。
なぜなら、その答えは『色分け花図鑑 桜草』154ページにあります。
「江戸っ子は旬の白魚と桜草をてみやげに春を楽しんだとされる」と鳥居氏が書いているのです。
白魚は産卵のため海から遡上してきますが、泥地には遡上しません。綺麗な砂礫の川に遡上するのです。
それに、時代劇にはよく行商のシジミ売りが登場しますけど、シジミも泥には生息しません。砂礫です。
白魚とシジミが生息している川原に桜草が自生しているなら、
桜草は泥の中に自生していたのではなく、砂礫の中に自生ていたと捉えて栽培しています。

砂礫ですから、通気性と通水性抜群で、さらさらパラパラです。
浪華さくらそう会会長山原氏のBlog日本の桜草と美術『鉢開け続く』2011年10月27日をみますと
鉢開けした用土が砂礫のようにさらさらパラパラです。こういう用土が栽培に適しているのだと感じています。
(関東地方は湿度が低いなど、用土造りと潅水方法などは地域で違いますから、ご注意あれ)



もう一つ、
12-13ページ『高原の山地から流れ下り 江戸で花開いた桜草』で誤解を招いてる記述があります。
「荒川の肥沃な氾濫(はんらん)原に咲く桜草は水位の低下と洪水の減少から乾燥化が指摘されるが、云々。」

『水位の低下で乾燥化が指摘される』という記述は、おかしいです。
荒川も大河ですから、年間を通して季節毎に水位は変動したはずです。
山形県を流れる最上川も季節で水位は変わりますし、
桜草の自生地が在ったであろう赤川の水位も変動します。
釣りの参考にしている現代の水位計測地点では、雪解けの時期と夏場では、水位が1.5mは違います。

桜草は春一番に開花しますから、自生地は雪解けで増水しても潅水することなく、
花を愛でるのにぬかるむこともなく観賞できる高さに自生地があることになります。
そして草木に覆われ休眠している夏場の川の水位は、増水時より1.5m以上低いことになります。
つまり、乾燥化が原因ではなく、湿地化しないことが要因というべきです。

濡れた所が乾燥したから自生地が減少したのではなく
乾燥してる場所が濡れなくなったから自生地が減少していったのです。

私の桜草へのイメージは
・桜草は湿地の植物ではない。水が好きな乾き易い砂礫の植物。
・白魚、シジミ、イバラトミヨ、ホトケドジョウ、シマドジョウ、タリタナゴ、イシガイ
 等が生息するような砂礫の河川敷の葦原に共生していた。
栽培へのイメージのキーワードは『砂礫(通気性)と湿気(通水性)』
・濡れた土地(泥や土)が自生地ではなく、乾燥した土地(砂礫)が自生地。
・砂礫なので通気性と通気性が良く、保水性が弱いので、潅水が肝要で欠かせない。

こういうイメージを保っているので、
内側まで全部釉薬を塗られた鉢より、通気性と通水性が良い、通水性伝市鉢や駄温鉢を勧める次第です。


閑話
当Blog 2012年02月21日『 桜草の育て方.4-3』より抜粋。
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2012年02月16日「桜草の育て方.2」で
私は
『なにより深谷鉢の茶色を勧める、さくらそう会の先人たちは卑怯です』
と書きましたが
この楽老さんの記事が『桜草栽培の諸先輩たちの本音』に感じたので、此処に紹介したいと思います。
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サクラソウ鉢が通気性の悪い鉢を用いるのはサクラソウが湿原植物であるという認識に基づくものと思われます。これについては疑問があります。私の経験ではいつも湿った状態にしておいたサクラソウは大半が根が腐って枯れました。
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(中略)
そしてさくらそう会HPには 『桜草鉢の斡旋  深谷市のカトウ(有) 製造鉢を斡旋』 とあり
桜草栽培に適しているから紹介している分けではないのです。
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鳥居恒夫著『色分け花図鑑 桜草』134ページ『桜草鉢』より抜粋。
「釉薬がかけてあるので乾燥しにくく、湿地生の桜草にかない、云々。」
つまり『湿地生(湿地生まれ)の桜草に適っている』と記載されてますので
楽老さんでなくても、桜草を湿地植物と思い込んで栽培しても、当然ですよね。
桜草を湿地植物のイメージで栽培すると、根腐れします。ご用心ご用心。  


Posted by さくら at 12:00Comments(0)日本桜草の育て方