2015年03月16日

片野修 著「河川中流域の魚類生態学」

片野修著「河川中流域の魚類生態学」を読んだ。

片野修 著「河川中流域の魚類生態学」

自然環境と保全を語るとき、特徴的な場所や生物がフォーカスされ題材として取り上げることが多い。
それは読み手として関心事項に特化したタイトルと内容なら選択して購入しやすしく、楽しく読めるのだが
生き物は連鎖であり生態系と多様性が肝要なのに、それが省いて論ずる事になってしまいかねない。
国定公園や世界遺産、ラムサール条約に登録した自然豊かな場所を題材に自然環境と保全を語られてもピン!とこないし
サクラマスや鮭の稚魚やホタルの幼虫を放流したりと、1つの生き物だけを取り上げて、なにが働くというのだろう。

川の流れに勢いがなく、瀬なのか淵なのか、緩急の見分けが付かない。
町を流れる川は「美しい!」「自然豊かだ!」と言えそうで言えない今の状況でも
地元の河川だもの、そこの自然環境と生態系は守りたい。
でも何をどうしたらいいのか、我々には肝腎な箇所がぼやけてしまって判らないでいる。
河川管理を行う行政は解っているから河川改修を押し進めていくというのに・・・。

行政が河川改修を行う場合、民意を反映しようと説明会を開会したり広く意見を募集するが
見識が浅い我々一般人は
「自然に配慮した工事と川造りをお願いします」
「魚が住める川造りをお願いします」
と、常に抽象的で曖昧な文言でしかお願いが言えないでいる。
では具体的に願う「自然に配慮した川造り」「魚が住める川造り」の形は何なのか!?
その参考となる内容が、この本には書かれており、とても勉強になった。
赤川でも鮎が釣れなくなり、
「河床が低下して鮎が縄張りを張る石が無くなったから、川に大きな石を入れて、釣れるようにしてくれ!」
と、目先の釣果という己の願望のみで単略的な意見を述べる赤川漁協組合員が未だに居たりするが
どういう川造りを目指すのか、釣り人として共通の見識を持つためにも、ぜひ多くの人に読んでほしい1冊です!


片野修氏の本は一度紹介したことがある。
「アユの科学と釣り―美しい川とアユを願って」
著者は鮎釣り師でもあるが、釣りと鮎と生態系を多くの人の声を加えて書かれており、面白くためになるので
この手の本としては珍しく売り切れになったはず。
釣友は「注文したけど品切れだった」と言っていたのだが、アマゾンに新品が1冊残っていた。お薦めです♪

片野修 著「河川中流域の魚類生態学」

ほかにもカワムツやナマズといったマイナーな魚を取り上げた本が出版されていますが、
実はこれらの魚は清流=中流の魚なんですよね。
ナマズを田んぼの魚というイメージから泥を好むと思われがちですが、綺麗な砂礫の川を好みます。
赤川の梵字川や大鳥川はナマズが多く生息して、とくに大鳥川は宝庫でした。
釣りの対象となる魚の釣果は、漁協の放流数で変動可能なので、環境の指針にはなりませんが
放流されていない天然の魚種は河川環境の大切な指針です。
川が綺麗かそうではないのかは、魚が教えてくれます。
中流域の砂礫の川底の大切さを、私たちは忘れてはいけないと考えます。

片野修 著「河川中流域の魚類生態学」



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Posted by さくら at 04:00│Comments(0)その他15
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