2012年03月01日

孫半土鉢.2

孫半土鉢のことは詳しく調べられていないようです。
手持ちの資料から、孫半土鉢のことを調べてみました。

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農業世界 昭和15(1940)年11月号付録
『培養秘訣 櫻草の作り方 上原梓 佐々木尚友 共著 博文館』43ページ掲載『鉢』より抜粋
 鉢は、従来マゴハンド(孫半土)と云う瓶の様なものを専ら用ひてゐます。この鉢は、亦マゴハン(孫半)、マゴバチ(孫鉢)、マゴ(孫)、ハンド瓶(がめ)、ハンド鉢、ズンドウ(寸胴)、ズンドウ鉢(バチ)(寸胴鉢)、等と呼ばれて来ました。
 口径五-六寸、高さ六-七寸、稍分厚(ややぶあつ)の常滑焼でありまして、その外部には灰茶色の釉薬が用ひてあり、相當(そうとう)質の堅い鉢であります。鉢の胴から上の部分は殆ど同じ大きさでありましが、胴中は多少膨れてをり、底の方は幾分つまってゐます。
 何でも古老の語るところによりますと、昔焼物を製る時に、この中に入れて焼いたものださうで、元々鉢として製ったものではないらしいのです。従つて底には孔(あな)があいてをりませんから、日本櫻草の栽培にこれを用ひます場合には、鑿(のみ)の如きもので底に水抜き用の小孔を穿つてから使つたものです。
 (中略)
 尤も、その半面には、植替の時に多少抜き難いと云う缺點(けってん)があります。これは鉢の胴中が心廣いためであります。

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加藤亮太郎著『日本桜草』加島書店(昭和34(1959)年5月) 65ページ掲載『鉢について』より抜粋
 即ち、「孫鉢」とか「半土鉢」、「孫半」「孫半土」或いは「半土瓶」「寸胴」「寸胴鉢」と呼ばれているものです。これは甕形(※かめがた)をしていて、内外に釉薬がかかっているもので、口径、16センチから18センチ位、高さは18cmから20センチ程の厚ぼったい、常滑焼きであり、外側は渋みのある灰色を帯びた茶褐色で、質の堅い、やや寸胴型のものであります。そして、胴部は上下共に殆ど同径、縁は厚く、平らであり、中程は多少薄く、内側は底部が多少狭くなっているものです。
 この鉢は、実は植物を植える為めに作ったっものではなく、貴重な陶磁器類を焼く時の外枠として用いたものだそうです。
 したがって、底には他の鉢に見られるような水抜穴がありません。
 そこで、鉢として用いる場合には、中央に穴をあけて用いたものです。
(中略)。
 とは云うものの、この鉢にも僅かの欠点はないでもありません。即ち、胴中が、やや広く、鉢縁が内側に厚く抱込んでいるような形になっていますので、根がよく張ると抜き難いことです。

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鈴鹿冬三著『日本サクラソウ』NHK出版(昭和51(1976)年5月) 35ページ掲載『孫半土について』より抜粋
 このものにのみ利用された面白い鉢があり、今日に伝わってきたのが、この孫半土です。
 これは「孫鉢」「半土鉢」「孫半」「孫半土」「半土瓶」「寸胴」「寸胴鉢」などと呼ばれているもので、形は甕形(※かめがた)をしていて、内外に釉薬がかかっていて、大きさは色々ありがすが、大きなものでは、口径18-18.5cm、高さ12.5cm、縁の厚さ1.5cm、小さいものでは、口径16.5cm、高さ11.5-12.5cm、縁の厚さ1.2cmくらいです。渋みのある灰色を帯びた茶褐色で、質は比較的堅く、やや寸胴のものです。そして、胴部は上下ほとんど同径で、中程は少し薄く、内側は底部が多少狭くなっています。
 この鉢は、実は植木鉢ではなく、貴重な陶磁器類を焼く時の外枠「さや」として用いたものといわれています。武士の家などでは、これを味噌壺や梅干し壺に利用したとも言われています。
 したがって底には水抜き穴がありません。鉢として利用する場合には、中央に穴を開けて用いたものです。筆者も何鉢か開けましたが、堅いわりには比較的もろいので簡単に開けられます。
(中略)。
 しかし、この寸胴鉢にも欠点はあります。それは、鉢の縁が内側に抱え込んでいるような形になっているので、成育良好の場合には根がよく張っていますから、抜きにくいことです。

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鳥居恒夫著『色分け花図鑑 桜草』学研 2006(平成18)年2月 134ページ『桜草鉢』より抜粋
 江戸時代中期に桜草の品種が続々と生まれるに従って、1品種ごとに鉢植えして観賞することが始まった。当時はまだ、量産の植木鉢が無く、そこで台所で塩や味噌を入れていた小鉢を集めてきて、底に水はけの穴をあけ、桜草を植えた。
 尾張(愛知県)の瀬戸で焼かれた陶製の雑器で、内外に釉薬がかけてあり、日用品として大量に江戸の町でも使われた。形や大きさはさまざまで、5升入りの水瓶を半斗鉢といい、口径5-6寸(15-18cm)の小形のものは孫半斗鉢(孫半と略称)と呼び、植木鉢に活用して、いろいろな草木が植えられていた。

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『世界のプリムラ』誠文堂新光社 2007(平成19)年3月 233ページ掲載
 桜草鉢について 伊丹淸(淸は「清」の旧字)より抜粋。 
 何処の家の台所にもある瀬戸物の小さな壷、塩入れか何かに使われていた蓋のない壷に目をつけた人は、コツコツと底に穴をあけ、「これでいけるッ」とつぶやいたに違いない。瀬戸物屋に頼んでおけば、安価でいくらでも手に入った。
 こうしてできた鉢(壷)は、水がめなどに使われた半斗甕(はんどがめ、1斗の半分の5升入るのでそう呼ばれた)よりもうんと小さかったので孫半斗(まごはんど、略してまごはん)と呼ばれた。

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え〜、旧字体もそのままに本文を写す作業は面倒でしたが、
写し終えてみると、孫半土鉢のことなどはどうでもよく、もっとも強く心に残った事項は、
『甕』ってなんだ!? ということ。
加藤亮太郎著『日本桜草』(昭和34(1959)年5月)に記載されていた
※「甕形=かめがた」の『甕』という漢字でした。ちなみに皆さんは『甕』を読めますか?

私はてっきり『瓶』の旧字だと思っていたのですが、PCで変換しても漢字が出てきません。
漢和辞典を手に取ってひいてみますが・・・探せません。
孫半土なんてどうでも良くなるほど探しまくり、悩み、四苦八苦の末にやっと見つけました。
部首検索『亠(なべふた)の部』ではなく、『瓦(かわら)部』の13画に『甕:おう』で発見。
意味は<かめ><みか><もたい(もたひ)>。
お酒を入れる徳利の挿絵が添えられています。
PCで『おう』と打ち込み変換すると出て来ました。

『甕』ってなんだ!?



先ず最初に『甕』は、『瓶』と『壷』の旧字ではありませんでした。
ということは、『甕』≠『瓶』と『壷』ということになります。
(孫半は『甕』であり、『瓶』や『壷』ではないということ?)
またどうして『甕』の項に徳利の挿絵があったのでしょうか???

『甕』『甕』『甕』

『甕』でネット検索して、下記サイトをみつけました。
山口大学埋蔵文化財資料館年報
付篇 小野田皿山の硫酸瓶と石見焼・堀越焼の大甕づくり : 硫酸瓶の研究
http://www.lib.yamaguchi-u.ac.jp/yunoca/handle/C110004000008

研究内容はチンプンカンプンですが、『甕』と『瓶』という漢字が使われており、
『甕』に蓋がついたのが『瓶』のようです。


上記『甕』のイラストを見た私は、『あれ?!』と思いました。
だってこの形状は、2010年09月04日『not 孫半土鉢』で紹介した、鉢じゃないですか。
あれが『甕』だったんですね。



でもどうして漢字辞典の『甕』の項に、徳利の挿絵があったんだろう。徳利も『甕』なのかしら。
論文の中には写真もありました。


これを見て思ったのですが、『甕』とは陶器製の容器の総称ではないでしょうか。
孫半土鉢は色々な雑器だとすれば『甕』であり、『瓶』や『壷』ではないということです。
そう考えると、私の中では納得するものがありました。  


Posted by さくら at 19:00Comments(0)桜草の鉢

2012年03月01日

孫半土鉢.1

遂に、孫半土の鉢を入手しました。face05



孫半土は日用雑器だったそうなので、作りは雑。
釉薬を擦っており、当時から陶器としてのまともな商品ではなかった勘があります。
Blogいい、おしめりですネ『孫半土鉢?発見 2011年08月06日』も釉薬を擦ってます。



この孫半土は手炙りとして使われていたそうで、ヒビ割れており、灰の匂いが漂います。



しかし何より問題なのが・・・実はコレ、大きいんです。face03
左:伝市鉢丸形5号。右:寸胴5号鉢。



外径約21cm(歪みあり)、高さ約18cm、深さ約17cm、自重2025g、容積4400-4300cc。






外径約21cmと高さ約18cmから、7号鉢に相当するようです。
でもこれ、孫半土鉢なの???



  


Posted by さくら at 06:00Comments(0)桜草の鉢